史の詩集  Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集です。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

駅のホームで     550

駅のホームで 昔、別れたその人がいた 駅のホームに立っていた ぼんやり空をみつめてた 春の光の中に まるで妖精のように きらきらと輝いていた 春の風の中に 遠く想いをはせるように 髪をながしていた 停まった列車に目もくれず 発車のベルも聞こえないの …

じゃあな     549

じゃあな どうにでもなりなよ ついてきたお前が悪いのさ こうなることはわかっていたはずさ 何も知らなかったわけじゃないし 俺は一人でしか生きられないって あれほどいったじゃないか 形だけつくろって ここまで おまえのやさしさ わずらわしい おまえのあ…

J 548

J もう何もいらない 誰からも愛されなくてもいい あなたの横にいられるなら 誰かに愛されたいと願う Jもそんな女の子でした 毎日 祈りを捧げておりました 年頃になると きれいになりまして その瞳には いつも多くの男の子が 写っていました 悪癖といっては J…

人生航路     547

人生航路 いつでも手が届くと思っていた あなたの目に 私は入っていなかった なんて皮肉な なんて哀れな 去ったあと わかった 君への愛 大切なもの 失ってしまった 愛しているっていってくれた ずいぶん昔だったけど 君は本気だったのか 気持ちを汲めなかっ…

大きな愛     546

大きな愛 人を愛するようになって 初めてわかった たった一つの笑顔見たくて 疲れた日曜日 早朝から 連れていってくれた人の気持ち 僕は何も気づけなかった どんなに疲れてて どんなに一日休みたいのか それにもまして 僕の喜ぶその姿 見たかった 僕はそんな…

気分一新     545

気分一新 さびしさに 心痛むときは 青空を一つさすらう雲に 心をのせて どこか遠く 思いをはせてみよう 重い心は 簡単に飛ばないけれど 涙すれば その分 軽くなるかもしれない 高く 高く あがっていこう 地上が見えなくなるほどに 遠く 遠く 飛んでいこう 誰…

悲しみ     544

悲しみ 悲しみのどん底に落ちてしまったなら これ以上 悲しいことなんて ありゃしない 悲しくなれるってことは 幸せなのさ 悲しくなれないほど 不幸せな人もいる じっと 心の奥がみえてくる たった ひとかけらの幸せが 輝いているからさ 今まで多くの邪心に …

夕日のように     543

夕陽のように 夕陽があんなに 悲しく美しいのは 精一杯 燃えた一日 叶わず沈んで 報われなかった その恨み 赤い色に拒んで 無害に静かに そして確かに沈んでいく 誰も知らない その美しさの陰に この一日を創り出した大きな力を 君をたたえよう 心から 沈み…

人生気まぐれ     542

人生気まぐれ 信じられるものが すべて失われて 耐えられないほどの 苦しいときも 何度かあった 明日を思い浮かべられぬ日 これで終わりだ もうどうしようもない そう思ったはずなのに いつの間にか 今日がきている 癒せなかったはずの 疲労も 手さぐりして…

流れ星     541

流れ星 流れ星 すっと僕の胸をよぎった どこから来たのかわからない どこへ行くのかわからない 軌道をはずれて 一目散に落ちてゆく どこもかも真っ暗で 輝く星もない たとえ何かが見えようとも これまた人生 一直線 戻ることも 登ることもできない 身もだえ…

休もうよ     540

休もうよ 君は人生にピリオドを打つつもりかい その苦しみ その悲しみ 今の君にとっては 計り知れないほどの 大きさのもの 僕にはわからないって言ったね でも もう少し身体を休めてごらん 自分の悲しみが 他人の眼で みられるようになるまで そしたら そん…

だから私は     539

だから私は 何もかも 打ちひしがれ 心重く これ以上 何にもなれそうもない だから 私は幸せになれる 小さな歓びを 体に感じられる 乾ききった涙は 流れることはない 何もかも 夢破れ これ以上 悔やんでいても 何にもならない だから 今から 私は幸せになれる…

別れ     538

別れ 新しい人生の門出だと人は言う 卒業の 顔には微笑み 心に別れ涙 いつの間にか 美しくなって 近寄りがたくなった君が 蝶のように羽をのばす 君は飛んだ 春の盛りに 君は微笑んだ 日の光を浴びて 信じていた 君の笑顔 いつの日か 君が舞い降りてきてくれ…

出発     537

出発 苦しいことは 長い人生 さまざまに 降りかかるけど くじけちゃだめだよ 過ぎてしまえば 石ころさ うつむいて 足元みていても 何も起こらない 怖がらず ゆっくり 一歩を 踏み出すんだ そう まず一歩

足跡     536

足跡 あまりの苦しさに 街を飛び出して 誰もいない雪野原 倒れ伏せたまま 顔をうずめて 冷たさ 心の底から感じてた 一所懸命 歩んでた よき時代の過ぎたことに 気づかなかった 焦燥感は 敗北への鐘だった 酔うて 酔うて うぬぼれて いつの間にか 自分を失っ…

焼けぼっくい     535

焼けぼっくい 君の後ろ姿 何気なく横目で盗んでた 身動きせぬ 赤いカーディガンが いつの間にか 息づいて 温かいものが 僕に 再び 手に包むと 壊れてしまいそうな 君の後ろ姿 こんなに弱々しかっただろうか 忘れ 忘れ 忘れたいのを 忘れたつもりだった 僕の…

忘却    534

忘却 過ぎてしまったことは 今さら悔やんでも 仕方ないけれど 心に刻まれた傷は 癒すすべもない だけども 時は流れる 今 私が一人 悲しみに 打ちしがれていても だけども 時は流れる いつの日か これも些細な一夜に 過ぎなくなるだろう だから 今日までのこ…

終焉     533

終宴 おちる おちる おちる 冬に色づいた葉が 君はみつめていた 遠い日を おちる 木の葉にみつめていた 若く燃えてた 出会いの日から 時は知らず 身も知らず 色づき褪せた 二人の愛は 今 風に舞って散りゆく 君は何もいわず 落葉をみつめた 君の瞳は 静まり…

あなたがいたから     532

あなたがいたから あなたの住んでた この街は 今も 何一つ 変わっていない ちょっとした気まぐれに 誰も降りないこの駅に なつかしさに誘われました あなたと入った喫茶店に入り あなたの好きだったクリームを食べ あなたがいたから ぼくがいた そんな時代が…

ポプラの実     531

ポプラの実 ポプラの実を拾いながら おしゃべりしていた学生 並木通りのベンチは 若さに輝き満ちていた 一つのベンチで出会った二人に 恋が芽生えることもある 儚さがあまりにすぎた二人は 誰にも分けないから その重みにつぶされてしまう ポプラの実は すぐ…

毎日毎日     530

毎日毎日 夕焼け 野原で野球をやってた カラスが跳び カエルが鳴くと ボールが見えなくなって 仕方なく うちに走っていった そんな子ども心に おぼろ月も 一番星も美しかった 泥んこ 汗だらけ そんな時代の あの心は もう 戻らない 何かが沈み 朝が来る そん…

疑問     529

疑問 なぜ 人は皆 大人になるの 大切な 大きなものを 捨てて なぜ 人は大人に ならなければいけないの 夢も希望も どこかにしまって 教えて神様 私 どうすればいいの 大人になりたい なりたいって みんな 大人になっていったね でも 私は知っている 大人にな…

歩行者     528

歩行者 世の中に 背を向けた男が一人 夜の街を ポケットに手を入れ歩く 何が起ころうが かまわない クラクションも信号も目に入らない そいつは歩く 夜の道を 酒もたばこも捨てて 何も得たものはない あわれなひとりの男

今日はとても     527

今日はとても 雪が降りました この町に 二人の乾いた心を癒すように 冷たい風に流されて いつもの坂をのぼり 同じ角を曲がり 電話ボックスで立ち止まり 君は送ってくれた いつも別れる曲がり角まで さようなら いともさりげない 君のことばは かすかに震え …

悲しみの吹き溜まり     526

悲しみの吹き溜まり 町はずれの喫茶店は 小さな木戸をあけると ほろ苦いコーヒー豆が 音楽に乗ってくる 今日も また この時間には 悲しい人がカップをみている 一日のやるせなさをかきまぜ 疲れを癒す人が かわいた涙を目に残し 感傷にふけながら コーヒーを…

子犬     525

小犬 薄暗い 電燈の下に悲しい声で 小犬が鳴いている 疲れ果てた かぼそい足で 小さな体を支え 月をみている おまえはこれから どうするんだ ずっとそこに立っているのか 行くあても 帰るところもない放浪者 そんな お前の気持ちが 悲しいほど よくわかる 泥…

夏祭り     524

夏祭り お日さまが ちゃめっけ出して 顔を赤らめて 空が白けて 月がのぞきでたころ 村のはずれから めちゃめちゃ音頭がひびいてくる 子供にかぶさる浴衣や ものなれぬものをのせた下駄 おまえにしがみつく帯や 手持ちぶさな手をひっぱって ぞろぞろ ぞろぞろ…

夕焼けの空     523

夕焼けの空 初めてあなたと出会った日 夕焼けの空が君のようだなんて ぽつりといった一言が 印象的で たしかに 私は顔を赤らめて あなたをまばゆくみつめていた そのとき 私はなりたかった あなたの輝きに美しくも つづまやかな あの夕焼けの空に ほんのわず…

ティパックの心     522

ティパックの心 静まり返った夜ふけ 柱時計のが ボーン ボーン 前のめっていた頭が 反射的に起き上がり ねむりまなこをこすりながら ポットの湯を ティーパックに浸すと 赤っぽく色づいて ほんわり香りがカフェイン 窓を叩いていた 真夏の雨は いつの間にか…

明日になれば     521

明日になれば このままコーヒーカップに 吸い込まれてしまいそうな つらい気持ちだけど 涙が渇いたあとの私は 心が落ちついて すべて夢のように 過ぎていったことは ただ 夢でしかないと思い込むのよ そう 昨日 何もかも過ぎたように この悲しみも また過ぎ…