史の詩集  Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集です。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

少年と海     0060

少年と海 少年は砂を握った 強く握れば握るほど砂はこぼれた 砂は少年がそれまで出会ったどんなものとも違っていた 少年が自分の心を見つめて 説明できないものはなかった この世のすべてのものは 一つのものから派生している だから少年が砂に そうしたのは…

雪     0059

雪 君は外を見ていた ぼんやりうつろな目で見ていた 皆は不思議がって尋ねた 君は答えた 行が白いから 皆は笑った でも雪は白かった 君は、、、 ぼんやり、、、 皆は、、、 君は答えた 雪が舞っている 皆は笑った でも雪は舞っていた 君は、、、 ぼんやり、…

若さ     0058

若さ 意義なんかいらない プラスもマイナスもない 1滴の果汁が ほんのひととき うるおいを与えてくれるなら 僕は赤道を超えるのも厭わない 汽車にこがれて1人、 海の向こう 薄紫のあかつき 小さな停車場の踏み切りに 原野を染める黄昏 寂しいからではありま…

大人になるってこと     0057

大人になるってこと 大人になりたいという思いに 執着したのは はるかに遠い昔の日 日々過ぎゆくのが こわくて じっと心を見捨てようとしていた 幸せだった 大人になれば決まっている 歳をとれば決まっている この時代の美しさが 妙に悲しく 妙に美しく 僕は…

女性     0056

女性 僕はどんなものでも手に入れた あと残されたもの それは女性だった 神に祈った どんなものにも負けない女性を 授けてください と そして幸福にも それだけの女性が僕を訪れた そしてまもなく帰っていった 僕は全財産を失なって ぽつんと1人立っていた

花火     0055

花火 にぎわい いつの間にか 過ぎて 川は いつものように 黒く流れていた 今日は 騒がしかったね うるさくて 大変だったろう でも 年に一度だもの 大目に見てやろうよ ほら もうみんな 帰ったぜ よければ 夜明けまで語り合おうよ 僕は河原にねころんだ 空は …

夢ごころ     0054

夢ごころ 君を忘れちまったはずの心に 君の面影が浮かんで かすんで消えていく それがまた耐えがたくて 鉛筆とってみりゃ 君の顔さえ 今はもう 覚えていなかった ヘタなりに精いっぱい描いてみると それなりの顔になってきた でもよく見ると 僕の顔じゃない…

心     0053

心 あまりに 重かったので なかを 覗いてみた ら からっぽ だった

天国行き     0052

天国行き 天国に行きましょうか 極楽に行きましょうか いえいえ そんな地獄に行きたくありません 生するものが降りませんもの 死するものがおりませんもの

真実     0051

真実 地平線が円く見える目には 地球の回転が しこたま 早まるだろう 僕は そのときも 立ち続けられるか

失恋     0050

失恋 だから 笑うだけよ

酒宴     0049

酒宴 杯を手にしたまま じっと見ていた 酒面に あなたの顔が 暗く哀しげな 僕はゆっくりと口をつけた そしてあなたの哀しみを飲み干した 50

雨だれ     0048

雨だれ ねえメロディー 今日はいやにウキウキしてたね いいことあったの 僕はいつも通りさ 外には何もないよ 雨が降ってきたのさ

雨     0047

雨 お嬢さん 傘をさしなさい 雨に濡れてはなりません あなたのか弱い純粋な心が 溶けたらどうするのです

神の死      0046

神の死 神が死んだ いいことじゃないか 悪魔も死んだのだから 否 世の中がつまらなくなっちまった

栄光     0045

栄光 人生の摩擦で こんなにも角がとれ 光沢に刻まれた歴史が こんなにも神々しい はげ照らす頭

20歳     0044

20歳 無邪気の10年の後 無意味な10年が過ぎ それを意味づける年月となった

別れ     0043

別れ 手紙の 最後に サヨウナラ と 書いたのを あなたは 好意的 に 解釈しちまった

救い     0042

救い 崖の上に立った 人生の底を見た 気が狂った それで飛び込まなかった

お陽さま     0041

お陽さま 幸いにあまりにまぶしいので 真偽のほどは定かじゃありませんが この頃ちょっと調子が悪いみたいで 目を閉じています 大体どうでもいいことです 愛を忘れるほど平和なのです 僕とても 凝らした目を焼かれて せっかくの満月まで 見られなくなっては …

幻想     0040

幻想 月が闇から切り出されて ぶら下がっています 夜空の裏側は 明るいのでしょうか そういや 古びたなべぶたの穴ぼこに 洩れてくるあかりが 淋しくも笑って いるではありませんか

生     0039

生 祭りが終わった 夕日が沈んだ 涙がこぼれた

ブンレツショウ     0038

ブンレツショウ チョコタン チョコタン スッチョコタン アッチャン べっチャン ブッチャンチャン ケッチャカ ベッケイ ホンチャカチャン

ヨイ     0037

ヨイ ウィウィウィ ウィウィウィ う〜ぃ ういうい ウィウィウィ ウィウィウィ う〜ぇ うぇうえ オェオェオェ オェオェオェ

酔い     0036

酔い よいよう よいよう ようよう ようよう よえよう よえよう よおよう よおよう

荒海     0035

荒海 波を振り上げて 僕を打ち砕こうとするのは なぜだ 海よ 君の強さが哀しい 君の偉大さに 僕は孤独だ 君は永遠だ 僕にとっては そうだ よしんば命奪われようとも 君と一体になれれば 何を悔やもう いや 君はきっと浜辺に 醜い僕の死体を 吐き出すだろう …

詩人の死     0034

詩人の死 詩人 だって へっ 死人でたくさんだ 33 かの詩人 手のひらから こぼれ落ちる砂を見て かの詩人は嘆いた けっ 胸くそ悪い いっそ口の中に入れちまえば 純朴で哀れなこの砂が どれだけ辛いか わかっただろうに 35

かの詩人     0033

かの詩人 手のひらから こぼれ落ちる砂を見て かの詩人は嘆いた けっ 胸くそ悪い いっそ口の中に入れちまえば 純朴で哀れなこの砂が どれだけ辛いか わかっただろうに

余計なこと     0032

余計なこと 余計なことばかりして 失恋しまった 腹立ちまぎれに 蹴った小石が 転げて 道端の これまた小石に 寄り添った また余計なことをしちまった

「詩人の魂」

― 史(ふひと)独白 もう本人も忘れてしまった遠い日々、必死に書き連ねたであろうノート1冊が、プリントすると、わずか10ページくらいに納まってしまう。そうして、凝縮してしまった日々の重みを、すでに遠く消えてしまった私の細胞を感じ、直すことさえ…