史の詩集  Fuhito Fukushima

福島史(ふくしまふひと)の詩集です。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

VOL.5 586〜595

86.遅すぎた秋 愛かもしれぬと 気づいたときは おかしくって おかしくって 古い思い出に しばられて 本当の僕の心は 飛んでしまった 夜空の下の 田んぼ道 笑いながら 送ってあげた 君だから 送ってあげた 僕は照れてしまっていただろうか 想い出は そうな…

幼き恋     585

幼き恋 いじめたい気持ちは かわいいからよりも 幼い愛そのものだった なんて 女になりゆく君を見ながらも しいて目を伏せていた僕 女としてみることもなく 別れの予感 知ったから 女になりゆく君をそのまま 僕の手で受け止めればよかった

去りしとき      584

去りしとき 年月経てば 過ぎ去ったことは 消えゆくはずなのに 忘れられぬばかりか ますます強く心もえぐる 気づかずによいことに 気づいてしまった 年月は流れ 人は去り どうすることもできない あのとき気づいていれば どんなに幸せになっただろうに うっか…

小石ころころ     583

小石ころころ 道端に転がっている小石にも それぞれ心あり 思いもあります その小石が たとえば 愛を語ったり 夢を抱いたりすることもあるでしょう 小石にすぎた身分なんていわないでください 飾り気のない小石は 誰よりも純で素直なのです 心を隠すなんてこ…

操り人形(2)     582

操り人形(2) そのほほえみは絶えることなく その身のこなしは板についていて 誰の目にも君は素敵な姿 君の瞳には幸福の他に何も見い出せない 少女は君になれる日を夢みて 少年は君の姿を憧れて 君は自分の美しさを知らないから 他の人が思うほど 幸せを感…

操り人形     581

操り人形 君は踊らされているのがわからない あいつにはもう決まった娘がいるのに 君はあいつにとってなんでもない ただの操り人形さ 君の捧げるその愛も 受け止めるわけもなく 報われず 思い悩むうちに 君はすっかり擦り減ってしまう それでも君は夢みるの…

思慕     580

思慕 昔 別れし その人の 雪降る窓にうつるとき 底に沈みし 我が血潮 ほのかにたぎりぬ 花散りし 心の酔ひの慰めに 君と歩きし この道も 白く悲しく 乾きにけり 鳥飛びし 心の声の歓びに 君をみつめし この街も 今はただに 羽を休めぬ 雲染めし 心の旅の終焉…

それしか     579

それしか いつものように 戻ってくる手紙は あてのない僕の心のさまよい 君の香に触れることなく 僕の涙でしめった文字を 乾かして帰ってくる 届く日もあろうことかと 儚すぎる望みをたくして それしかない それしか・・・

風     578

風 無性に 何かを話したいとき そっと 耳を貸してくれる人がいた そして ふっと ほほえむ人がいた それだけで 僕の心は 洗われて ここちよい風が 吹き抜けた その風は 今はいずこ どこへ 行ってしまったのか

かごのなかの鳥     577

かごのなかの鳥 とても美しく整った羽でした たくましく伸びた羽でした いつも考えるのです この羽でどこまで飛べるかって いつも思うのです あの雲の上までいけるだろうって 空想の世界が あの青空よりも広いのは 不思議なことです そこにいる限り いつも飛…

届かない想い     576

届かない想い プラットホームの片隅に 青いブレザーを着て 水色のショルダーを 細い肩にかけていた 少女らしさが まだ抜け切れないまま すっと つまさきを見る そのしぐさは なんとなく 女らしく なってしまって 美しく なってしまって 遠く なってしまって …