遺品I・II 560
遺品I
どうして君は旅立ったの
どこに向かって飛んでくの
生まれたときから親しんだ
この美しい森を捨ててまで
そんな小さな羽で どこまで行ける
森の外に何がある
限りない草原か
枯れてしまった荒野か
生きていける 何もない
そんなにさびしいとこなのに
君の力じゃ そこまでも
たどりつけやしないだろう
ましてや その草原の
その荒野の向うに行くなんて
君の慕ったあいつも
君より夢をとった
あんなに強かった奴でさえ
荒野の中に眠ったというのに
追うのはおよしよ
悲しみは捨てて
遺品II
君を恋そめし 幼きころは
誰よりも君が想われて
想わなければいられない
そんな恋情が不思議で
不思議よりも想ってた
それが恋だと知ったのは
ずっと後のことだけど
恋というものが
こんなに身近にあったなんて
そのとき君はいなかった
何も知らずに 別れた後だった
どうして恋をしたのか
知らなかったから
恋してどうなるのかなど
わかるはずもなかった
そんな幼い心にも
どうにかしたいと 思っていたらしく
君のくれたものを 大事にとっていた
それが精一杯だった
何もかも忘れてしまった今でさえ
小さな貝からは
広い海のさざなみのあわあわ
しとげな初恋のほのかな香りを漂わす